2026年9月29日 ・ 読了目安 4 分
移動平均法とは?在庫の原価計算のやり方と先入先出(FIFO)との違いをわかりやすく解説
移動平均法(いどうへいきんほう)とは、 仕入れ(入庫)のたびに「それまでの在庫金額+今回の仕入額」を「それまでの在庫数量+今回の仕入数量」で割り、 在庫の平均単価をその都度更新していく棚卸資産の評価方法です。 同じ品目でも仕入れ値が仕入れごとに変動する場合に、在庫の評価額と払出(出庫)時の原価を一定のルールで決めるために使います。 先入先出(FIFO)や総平均法と並んで、会計上よく使われる評価方法のひとつです。
移動平均法の計算のしくみ
計算式はシンプルで、仕入れが発生するたびに次の式で平均単価を出し直します。
出庫(払出)が起きたときは、その時点の平均単価をそのまま原価として使います。 次に仕入れが発生するとまた平均単価を再計算する、という繰り返しです。 総平均法のように月末や期末にまとめて計算するのではなく、動きがあるたびに単価が更新される点が最大の特徴です。
具体例で見る移動平均法の計算
ある品目の入出庫を例に、平均単価がどう動くか追ってみます(数値は説明用の目安です)。
| タイミング | 在庫数 | 内容 | 平均単価 | 在庫評価額 |
|---|---|---|---|---|
| 期首在庫 | 10個 | @1,000円で保有 | 1,000円 | 10,000円 |
| 仕入① | 30個 | 20個を@1,200円で仕入れ | 1,133円 | 34,000円 |
| 出庫 | 15個 | 15個を平均単価で払出 | 1,133円 | 16,995円 |
| 仕入② | 25個 | 10個を@1,400円で仕入れ | 1,240円 | 30,995円 |
仕入②のタイミングでは、直前の在庫評価額16,995円に今回の仕入額14,000円を足した30,995円を、 在庫数25個(15個+10個)で割って平均単価を出し直しています。 仕入れ値が上下しても、在庫全体の評価額はこの計算を積み重ねるだけで常に把握できます。
先入先出(FIFO)・総平均法との違い
| 方式 | 単価の決め方 | 計算の手間 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 移動平均法 | 仕入れの都度、平均単価を再計算する | 仕入れ頻度が多いと手計算では負担が大きい | 仕入れ値の変動を随時、在庫評価額に反映したい |
| 先入先出法(FIFO) | 先に仕入れたロットから順に払い出したとみなす | 入荷ロットごとの管理が必要 | 期限管理と相性がよく、実際の商品の流れに近い |
| 総平均法 | 一定期間(月次など)の仕入合計を数量で割る | 期末に一括計算でよい | 仕入れ値の変動が少なく、日々の計算負担を減らしたい |
詳しい考え方は「先入先出(FIFO)とは」、「総平均法とは」でも解説しています(同じ取引で3方式の数字を比べています)。期限や劣化のある商品はFIFO、仕入れ値の変動をきめ細かく原価に反映したい商品は移動平均法、 というように品目の性質で使い分けている事業者も多くあります。
移動平均法のメリット・デメリット
- メリット: 仕入れ値の変動を随時反映するため、在庫評価額が実態からかけ離れにくい
- メリット: 総平均法と違い、期中いつでも「今の評価額」がわかる
- デメリット: 仕入れのたびに再計算が発生するため、品目数・仕入れ頻度が多いと手計算では追いつかない
- デメリット: FIFOのように「どのロットが残っているか」は把握できない(単価は平均化される)
よくある質問
Q. 移動平均法とFIFOはどちらが正確ですか?
A. どちらも会計上認められた評価方法で、優劣があるわけではありません。 FIFOは実際の商品の流れに近い一方、移動平均法は仕入れ値の変動を平準化して評価額を安定させやすい、という性質の違いです。 品目の特性(期限の有無・仕入れ値の変動幅)に合わせて選びます。
Q. 手計算でもできますか?
A. 仕入れの回数が少なければ手計算やExcelでも可能です。ただし仕入れが増えるほど再計算の回数も増えるため、 品目数が多い・仕入れが頻繁な事業者は、在庫管理システムや会計ソフトで自動計算させるのが現実的です。
Q. 移動平均法を使うには届出が必要ですか?
A. 棚卸資産の評価方法は税務署へ届け出た方法を使うのが原則で、届出をしていない場合は法定の評価方法(最終仕入原価法)が自動的に適用されます。 移動平均法を使いたい場合は、事前の届出が必要かどうかを顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。
タナオロでできること
タナオロは在庫の「数量」の管理に特化したシンプルな在庫管理アプリで、移動平均法のような入出庫ごとの単価再計算機能は搭載していません。 品目ごとに単価をひとつ設定して、在庫評価額のおおまかな目安を把握する使い方に向いています。 仕入れ値の変動を厳密に原価計算へ反映したい場合は会計ソフト側で移動平均法・総平均法を適用し、 タナオロは「今いくつあるか」の実数管理に使う、という役割分担がおすすめです。 Excel・zaicoのCSVはそのまま取り込めるので、まずは数量管理から気軽に試せます。