2026年10月1日 ・ 読了目安 5 分
総平均法とは?在庫の原価計算のやり方と移動平均法・先入先出法との違いをわかりやすく解説
総平均法(そうへいきんほう)とは、 「期首の在庫金額+期間中の仕入金額の合計」を「期首の在庫数量+期間中の仕入数量の合計」で割って平均単価を1つ出し、 その単価で売上原価と期末在庫の評価額を計算する棚卸資産の評価方法です。 仕入れのたびに単価を更新する移動平均法と違い、期間が終わってから1回だけ計算すればよいのが特徴で、 手計算や表計算ソフトで原価を出している小規模事業者にも使いやすい方法です。
総平均法の計算式
- 売上原価(払出原価) = 総平均単価 × 期間中の出庫数量
- 期末在庫の評価額 = 総平均単価 × 期末の在庫数量
単価を決めるには期間中の仕入れがすべて出そろっている必要があるため、計算できるのは期間の終わりです。 期間の途中では、払い出した分の原価はまだ確定しません。
具体例で見る総平均法の計算
ある品目の1期間の入出庫を例にします(数値は説明用の目安です)。「移動平均法とは」の記事と同じ取引なので、あとで方法ごとの差を比べられます。
| 順番 | 内容 | 数量 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 期首在庫 | @1,000円で保有 | 10個 | 10,000円 |
| 仕入① | @1,200円で仕入れ | 20個 | 24,000円 |
| 出庫 | まとめて払い出し | 15個 | — |
| 仕入② | @1,400円で仕入れ | 10個 | 14,000円 |
まず期首在庫と仕入れを合計します。数量は10+20+10=40個、金額は10,000+24,000+14,000=48,000円です。 総平均単価は 48,000円 ÷ 40個 = 1,200円。 ここから次のように求めます。
| 項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
| 売上原価(出庫15個) | 1,200円 × 15個 | 18,000円 |
| 期末在庫の評価額(25個) | 1,200円 × 25個 | 30,000円 |
売上原価18,000円と期末在庫30,000円を足すと48,000円になり、最初の合計と一致します。 移動平均法のように出庫時点の単価で払い出さず、期間全体の平均で一括して計算している点に注意してください。
月別総平均法(月ごとに計算する方法)
1年分をまとめて計算すると、決算まで原価がわかりません。 そこで「1か月ごとに総平均法で計算し、月末の金額を翌月に繰り越して順に計算する」方法がよく使われます。 国税庁の所得税基本通達47-3は、この月ごとの計算も総平均法に該当するとしています (出典: 国税庁「所得税基本通達 47-3(月別総平均法等)」・2026年10月1日確認)。 月が終わるたびに平均単価が確定するので、月次の粗利を見たい事業者にも向いています。
移動平均法・先入先出法との違い(同じ取引で比較)
上の取引を、出庫のタイミングを「仕入①の後・仕入②の前」として3つの方法で計算すると、結果は次のとおりです。
| 方式 | 売上原価(15個) | 期末在庫の評価額(25個) | 単価が決まるタイミング |
|---|---|---|---|
| 総平均法 | 18,000円 | 30,000円 | 期間(または月)の終了後 |
| 移動平均法 | 17,000円 | 31,000円 | 仕入れのたび |
| 先入先出法(FIFO) | 16,000円 | 32,000円 | 出庫のたび(古いロットから) |
仕入れ値が上がっている場面では、先入先出法は古くて安い在庫から払い出すため売上原価が小さく(利益が大きく)出て、 総平均法は期間全体の平均に均されるため3方式の中で最も売上原価が大きく出ています。 逆に仕入れ値が下がっている場面では、この大小関係はおおむね逆になります。 なお、移動平均法の記事の表は平均単価を円未満で丸めて計算しているため、数円の差が出ます(ここでは丸めずに計算)。
先入先出法の考え方は「先入先出(FIFO)とは」で解説しています。
総平均法のメリット・デメリット
- メリット: 計算が期間の終わりの1回で済み、表計算ソフトでも回しやすい
- メリット: 仕入れ値が細かく上下しても、期間全体で平準化される
- デメリット: 期間が終わるまで単価が確定せず、期中の売上原価・粗利がリアルタイムでは出せない
- デメリット: 「どのロットが残っているか」はわからない(期限管理には向かない)
総平均法を使うのに届出は必要?
個人事業主(所得税)の場合、棚卸資産の評価方法は届出で選びます。 国税庁の案内では、新たに事業を開始した方などは、開始した日の属する年分の確定申告期限までに 「所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書」を税務署へ提出し、 届出で選択をしなかった場合は最終仕入原価法が適用されるとされています。 すでに選んでいる評価方法を変えたい場合は、別途「変更承認申請書」が必要です (出典: 国税庁「A1-17 所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続」・2026年10月1日確認)。 法人は取扱いが異なるため、顧問税理士・所轄税務署にご確認ください。
よくある質問
Q. 総平均法と移動平均法はどちらが有利ですか?
A. 会計上どちらも認められた評価方法で、優劣はありません。仕入れ値の推移によって期ごとの利益の出方が変わるだけで、 仕入れた在庫をすべて売り切った時点での原価の合計は同じです。期中にも原価を把握したいなら移動平均法、計算の手間を減らしたいなら総平均法、 という使い分けが一般的です。
Q. 総平均法は1年分をまとめて計算しないといけませんか?
A. 年単位のほか、月ごとに計算して翌月へ繰り越す月別総平均法も総平均法として扱われます(上記の通達)。 月次で損益を見たい場合は月別のほうが実務に合います。
Q. 途中で評価方法を変えてもよいですか?
A. 届出た評価方法を変更するには、税務署への変更承認申請が必要です。比較して決めるのは届出の前に済ませておくと安全です。
タナオロでできること
タナオロは在庫の数量管理に特化した在庫管理アプリで、総平均法のような期間全体の平均単価を自動計算する機能は搭載していません。 品目ごとに単価をひとつ設定して、在庫金額のおおまかな目安を見る使い方に向いています。 総平均法の計算に必要な「期末の在庫数」「期間中の入出庫」は、タナオロの入出庫履歴と棚卸で正確に残せるので、 原価計算は会計ソフト側に、数量管理はタナオロにと役割を分けて運用できます。 登録から30日間はスタンダードプラン (月4,980円) の機能を無料で試せ、 Excel・zaicoのCSVもそのまま取り込めます (お試し後の無料枠は10件)。