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2026年10月7日 ・ 読了目安 6 分

個別法とは?一点物の在庫を1点ずつの仕入価格で評価する方法と、使えない商品・届出

個別法(こべつほう)とは、期末に残っている在庫を「1点ごとの取得価額(仕入価格+付随費用)」のまま評価する棚卸資産の評価方法です。 平均や「古いものから売れたことにする」といった仮定を使わず、残っている個体の取得価額を足し合わせれば期末棚卸高が出ます。 中古品・古着・骨董品・一点物のハンドメイドなど、1点ずつ仕入価格が違い、個体を見分けられる商品向きの方法です。 一度に大量に仕入れる規格品は、条文で個別法を選べません。個人事業主が使うには、他の方法と同じく税務署への届出が必要です。

個別法の計算式(期末棚卸高の出し方)

期末棚卸高 = 12月31日に残っている個体それぞれの取得価額の合計
売上原価 = 期首の棚卸高 + 当期の仕入高 - 期末棚卸高
  • 取得価額は、購入代価に、引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料・関税など購入のために要した費用を加えた金額です。さらに、販売の用に供するために直接要した費用があれば加算します(所得税法施行令第103条第1項第1号)
  • 期首の棚卸高は、前年末に残っていた個体の取得価額の合計です
  • 当期の仕入高は、その年に取得した個体の取得価額の合計です

所得税法施行令第99条第1項第1号イは、個別法を「期末棚卸資産の全部について、その個々の取得価額をその取得価額とする方法」と定めています (出典: e-Gov法令検索「所得税法施行令」・2026年10月7日確認)。 上の計算式は、この条文を式に直したものです。平均単価も原価率も出てこないので、計算そのものは評価方法の中でいちばん単純です。 そのかわり、1点ごとの取得価額が記録されていることが前提になります。

具体例で見る個別法の計算(中古カメラ店)

中古カメラを1点ずつ仕入れて売る店の1年間を例にします(数値は説明用の目安です)。 前年末から持ち越した1点(D)と、この年に仕入れた3点(A・B・C)を、それぞれの取得価額で記録しています。

品物取得価額の内訳取得価額12月31日の状態
D フィルムカメラ(前年末からの在庫)前年末の評価額22,000円年中に売れた(売価31,000円)
A レンズ購入代価38,000円 + 引取運賃1,000円39,000円在庫として残っている
B 一眼レフ本体購入代価64,000円 + 購入手数料3,200円 + 引取運賃1,300円68,500円年中に売れた(売価98,000円)
C 三脚購入代価9,500円(付随費用なし)9,500円在庫として残っている
計算式結果
期首の棚卸高D の取得価額22,000円
当期の仕入高39,000 + 68,500 + 9,500117,000円
期末棚卸高残っている A + C = 39,000 + 9,50048,500円
売上原価22,000 + 117,000 - 48,50090,500円

売れた2点(B・D)の取得価額の合計は68,500円+22,000円=90,500円で、式で出した売上原価と一致します。 売上は98,000円+31,000円=129,000円なので、売上総利益は38,500円です。 1点ごとに見ても、B は29,500円、D は9,000円の粗利で、「どの品物でいくら儲かったか」がそのまま読めます。 これが個別法の特徴で、期末棚卸高も売上原価も、実際に買った個体の取得価額から直接出ます。

取得価額にどの費用まで含めるか(少額の付随費用の扱いなど)は、細かい判断が絡みます。 迷う場合は税理士・所轄税務署にご確認ください。

他の評価方法との違い(同じ取引で比較)

「総平均法とは」などで使った取引(期首10個@1,000円・仕入20個@1,200円・出庫15個・仕入10個@1,400円)に個別法を当てはめます。 期末在庫は25個、取得価額の総額は48,000円です。出庫した15個は、最後の仕入れ(@1,400円)より前に入ってきた30個(期首10個+仕入20個)の中から出たことになります。

方式期末在庫の評価額(25個)売上原価単価の決め方
個別法(売れた個体次第)30,000〜32,000円16,000〜18,000円売れた個体の取得価額をそのまま使う
最終仕入原価法35,000円13,000円最後の仕入単価を全数に適用
先入先出法(FIFO)32,000円16,000円新しい仕入れから順に残っているとみなす
移動平均法31,000円17,000円仕入れのたびに平均単価を更新
総平均法30,000円18,000円期間全体の平均単価を1つ出す

個別法は、「出庫した15個が実際にどの仕入れ分だったか」が決まって初めて数字が1つになります。 出庫したのが期首の10個(@1,000円)と仕入20個のうちの5個(@1,200円)なら、売上原価16,000円・期末32,000円で、先入先出法と同じ結果です。 出庫した15個がすべて@1,200円の仕入れ分なら、売上原価18,000円・期末30,000円で、総平均法と同じ結果になります。 つまり、この取引で個体を特定できた場合の期末の評価額は30,000円から32,000円の範囲に収まります。 最終仕入原価法の35,000円がこの範囲の外にあるのは、実際に買った個体の取得価額ではなく、最後の仕入単価を全数に当てはめる「みなし」の方法だからです。

ただし、この取引のように同じ商品を何個もまとめて仕入れる場合は、売れた1個1個を特定するのが現実的ではありません。 次の見出しのとおり、大量に取得した規格品は条文上、個別法を選べません。上の範囲は、個体を特定できると仮定した場合の参考です。 ほかの方法は「移動平均法とは」、「先入先出(FIFO)とは」、「最終仕入原価法とは」、「売価還元法とは」で解説しています。

個別法が使えない商品・向く商品

所得税法施行令第99条第2項は、個別法を選べない商品を定めています。 「棚卸資産のうち通常一の取引によって大量に取得され、かつ、規格に応じて価格が定められているもの」については、個別法(個別法を基礎にした低価法を含む)を選定することができません (出典: e-Gov法令検索「所得税法施行令」・2026年10月7日確認)。 下の表は、この条文をもとにした整理です(「向く」「向かない」の目安は筆者の整理で、条文が直接そう書いているわけではありません)。

向く商品向かない商品
仕入れ方1点ずつ仕入れ、仕入価格が個体ごとに違う同じ規格のものを一度に大量に仕入れる
商品の例中古カメラ・古着・骨董品・宝飾品・一点物のハンドメイドネジ・文房具・缶飲料・同一型番の量産品
価格の決まり方個体の状態や仕入先ごとに値段が違う規格(サイズ・型番・容量)で値段が決まっている
個体の見分け1点ごとに管理番号を付けて追えるバラ売り・計量販売などで個体を見分けられない
点数数点〜数百点(筆者の整理)数千点以上・回転が速い(筆者の整理)

評価方法は、事業の種類ごと、かつ商品又は製品・半製品・仕掛品・主要原材料及び補助原材料などの区分ごとに選びます(同令第100条第1項)。 商品の中に一点物と規格品が混ざる店で、どう区分を切るかは、税理士・所轄税務署にご確認ください。 規格品が中心で個別法を選べない場合は、総平均法などの別の方法を検討します。

個別法の手順

  1. 1仕入れた1点ごとに管理番号を付け、取得価額を記録する。購入代価に運賃・手数料などの付随費用を足した金額を、台帳の1行に残します
  2. 2売れたら、台帳の該当行に販売日と売価を記録する。どの個体が売れたかを特定できる形にしておきます
  3. 312月31日に実地棚卸をして、残っている個体と台帳を突き合わせる。進め方は「実地棚卸とは」にまとめています
  4. 4残っている個体の取得価額を合計する。この金額が期末棚卸高です
  5. 5売上原価を出す。期首の棚卸高 + 当期の仕入高 - 期末棚卸高です

個別法のメリット・デメリット

  • メリット: 実際に買った個体の取得価額がそのまま評価額になるので、平均や仮定による「ずれ」がない
  • メリット: 1点ごとの粗利(売価 - 取得価額)が出るため、どの仕入れが儲かったかを振り返れる
  • メリット: 計算式が単純で、期末に平均単価や原価率を出す手間がない
  • デメリット: 1点ごとの取得価額と販売の記録を、年間を通して残し続ける必要がある。記録が抜けると期末棚卸高が出せない
  • デメリット: 点数が増えるほど台帳の管理が重くなる。大量取得の規格品には、そもそも選べない
  • デメリット: どの個体が売れたかで売上原価が変わるため、帳簿の記録が現物と一致していることが前提になる

個別法を使うには届出が必要

国税庁の案内では、新たに事業を開始した方などは、その日の属する年分の確定申告期限までに 「所得税の棚卸資産の評価方法・減価償却資産の償却方法の届出書」を提出して評価方法を選びます。 備考として、届出により選択をしなかった場合は、最終仕入原価法が適用されますと明記されています (出典: 国税庁「A1-17 所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続」・2026年10月7日確認)。 つまり、個別法を使いたい場合は、届出で個別法を選んでおく必要があります。

  • すでに別の方法を選んでいる・最終仕入原価法が自動適用されている場合は、変更の承認申請が必要です。 新しい方法を採用する年の3月15日までに申請書を提出します(所得税法施行令第101条第1項・第2項)
  • 変更は却下されることがあります。現在の方法を採用してから相当期間を経過していないとき、または変更後の方法では事業所得の金額の計算が適正に行われ難いと認められるときです(同条第3項)。 申請書を出した年の12月31日までに承認も却下もなければ、その日に承認があったものとみなされます(同条第5項)
  • 個別法は原価法の1つ(第1号)なので、青色申告の承認を受けていなくても選べます。 低価法は青色申告の承認を受けている場合に限られます(同令第99条第1項)
  • 法人の場合は取扱いが異なります。顧問税理士・所轄税務署にご確認ください

よくある質問

Q. 個別法は個人事業主でも使えますか?

A. 使えます。所得税法施行令第99条第1項第1号イに定められた評価方法のひとつで、届出で選択します。 ただし、大量に取得され規格に応じて価格が定められている商品には使えません(同条第2項)。

Q. 届出をしていなかった場合はどうなりますか?

A. 最終仕入原価法で評価したものとして扱われます(同令第102条第1項)。個別法へ切り替えるには、変更の承認申請が必要です。

Q. 同じ型番の商品を、仕入れのたびに違う価格で買っています。個別法でよいですか?

A. 売れたものが「どの仕入れ分か」を1個ずつ特定して記録できるなら、個別法の考え方に当てはまります。 一方、一度に大量に取得し、規格に応じて価格が決まっている商品は、条文上選べません。 どちらに当たるかは仕入れ方によるため、税理士・所轄税務署にご確認ください。 個体の特定が難しい場合は、移動平均法や先入先出法が選択肢になります。

Q. 自分で作ったハンドメイド作品にも使えますか?

A. 自分で製造した棚卸資産の取得価額は、原材料費・労務費・経費の額に、販売の用に供するために直接要した費用を加えた金額です(同令第103条第1項第2号)。 一点物の作品なら、作品ごとにこの金額を記録しておけば個別法の考え方で評価できます。 どこまでを材料費・経費に含めるかは、税理士・所轄税務署にご確認ください。 材料の管理は「ハンドメイドの材料・パーツ在庫管理」で解説しています。

Q. 低価法と一緒に使えますか?

A. 低価法は、原価法で出した評価額と12月31日の価額を比べて低いほうを評価額とする方法で、個別法による評価額を基礎にすることもできます(同令第99条第1項第2号)。 ただし低価法は青色申告の承認を受けている場合に限られ、大量取得の規格品には個別法を基礎にした低価法も選べません(同条第2項)。

個別法は、1点ごとの取得価額の記録がすべての出発点です。仕入れた時点で付随費用まで含めた金額を台帳に残しておくと、期末に迷いません。

タナオロでできること

タナオロは在庫の数量管理に特化した在庫管理アプリで、取得価額の記録や評価額の計算(個別法を含む)をする会計機能は搭載していません。 品目ごとに単価を1つ設定すると、一覧に「在庫金額合計」(数量 × 単価の合計)が表示されます。 一点物を1点ずつ別の品目として登録し(数量1・単価=付随費用込みの取得価額)、売れたら出庫して数量を0にしておくと、 在庫金額合計は「いま残っている個体の取得価額の合計」になります。 上の中古カメラ店の例なら、年末に残る A(39,000円)と C(9,500円)で48,500円が表示される計算です(単価を入れた品目だけが対象です)。 年末の棚卸を終えた時点の合計を、会計ソフトの期末棚卸高と突き合わせる下準備に使えます。 単価は品目ごとに1つの数字で、入出庫ごとの単価の変動は追わないため、同じ品目を異なる価格で何度も仕入れる使い方には向きません。 登録から30日間はスタンダードプラン (月4,980円) の機能を無料で試せ、 Excel・zaicoのCSVもそのまま取り込めます (お試し後の無料枠は10件)。

出典・確認日(いずれも2026年10月7日確認)

本記事は一般的な解説であり、個別の税務判断は税理士または所轄税務署にご確認ください。

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